お手紙を書いたら

ありがとう、好きになってよかった、健康でいてねと伝えよう

「悔いはないです」を積みあげて

 

「本当に、深澤辰哉、悔いはないです」

 

2023年7月2日、バンテリンドームナゴヤ。『Snow Man 1st DOME tour 2023 i DO ME』の最終公演で、興奮と終演を予感した切なさがまじりあったあの空間で、私の鼓膜を揺らしたことば。まわりの音が全部溶けて消えたようで、まわりの風景も全部フェードアウトしたようで、"そこ"だけが研ぎ澄まされた。集中した刹那、心の中にぴーんと張っていた糸が大きく揺れた。

 

きっと、きっと、これは大切な瞬間になる。

深澤さんのこのことばを聞いてから半年近く経っても、ふとしたときにこの時間がよみがえってはきゅっと涙腺に力を入れて堪えるときがある。

 

「打ち合わせして、今日まで、本当に、深澤辰哉、悔いはないです」

 

そこにあったのは「達成したひとの顔」だった。美しくて、おだやかで、ひとつまみの安堵がまざったスッとした表情。「よかったね」の感情にあっという間に圧倒されて、声を殺して泣いた。

滝沢歌舞伎ZERO FINAL』やアルバム準備やその他たくさんのお仕事と並行して頑張ってきたこのツアー。SNSのレポで追っていたが、深澤さんが今回のツアー中にあいさつで内面を出した(とわたしが感じた)のはこの日が最初で最後だ。

深澤さんのステージパフォーマンスの何が好きかというと、客観性。世界観にどっぷりはまらないで3歩くらい離れて見ているような、その"なか"には確かにいるのだけれどふと漂う涼やかな理性と着衣の色気がたまらなく好きなのだ。本人も俯瞰的にグループを見るのが好きなタイプと話してはいるが、わたしが抱く「そういう深澤さんが見たい」理想が彼の行動に幸運にも重なったが故の感情なのは十分に承知のうえでそのスタンスを信頼している。グループにとっても大切な存在だと思う。

WiNK UP 2023年8月号では、ラウールくんと目黒くんとの対談で深澤さんのコンサートでのスタンスと性格が再確認できる。

 

目黒「(前略)冷静さが乗っかってる感じがする。公演後、全体の反省とか修正を出さないといけないポジションだから、そういう感じになるのかもしれないね」

ラウール「ふっかさん、ネジがはずれてバーンと飛んじゃうってことないの?」

深澤「…ない!」
 

内面というか、主観をコントロールしている印象の深澤さん。Snow Manの精神的支柱で、後方から包み込むようにメンバーを見守り、自分のことよりメンバーのことのほうが饒舌になる。そんなひとがちょっぴり内面を見せて放った「悔いはない」がどれだけ重くて、最高で、しあわせなことか。

続く『あいことば』では、最後の「そんな あいことば」のあと、空を見上げて右手で目頭に触れ、一度は前を向くけれどまた空を見上げて大きく、本当に大きく息をついていた深澤さんに、また泣いた。こみ上げるものを逃しているようなそのようすが、あいさつを聞いた後だとなおさら胸に迫った。

 

思い返せば「Snow Man ASIA TOUR 2D.2D.」の最終公演のあいさつでも同じようなことがあった。

 

Snow Manは色々な決断を自分たちでさせてもらえる。ありがたいこと。決断してきて今があるし、やっぱりこの決断をして間違っていなかった。

【Snow Man ASIA TOUR 2D.2D.感想(セトリ記載)】 10/25(日) 18:30公演 - お手紙を書いたら

ジュニアとして15年やってきて、辛い時期もあったけれど、今は幸せ。みんなの後ろ姿を見ていると、すごく頼もしい。

【Snow Man ASIA TOUR 2D.2D.感想(セトリ記載)】 10/25(日) 18:30公演 - お手紙を書いたら

(記録オタクの片鱗が出ている)

 

このときの表情もバンテリンドームで見たのと同じように、おだやかで美しかった。8人の背中を1番後ろから見ながら放った「幸せ」に、「よかったね」ってパソコンの前でおいおい泣いた。深澤さんのことばに泣く理由が3年前から同じじゃないか。

 

今年は特に、自分の仕事と人生に責任をもって生きているアイドルと、そんなアイドルをたまたま見つけて、彼らが目指すところや進む道に共感して、出てきたものを自分の好みと価値観に照らし合わせて応援しているファンの自分の間に立場の差を感じる年だった。Snow Manを好きになってからずっとその当然の差は意識しているけれど、今年は特に。

えらそうに聞こえても冷たく聞こえても構わないのだけれど、わたしは「一生応援するよ!」とは嘘でも言えない。(考えてばかりだしそういうにんげんなのでしょうがない)ただ、このひとたちの決めた選択や未来の足かせにだけは絶対になりたくない。深澤さんやSnow Manの人生に責任はもっていないし、向こうもこちらの人生に責任はないから、not for meが重なって自分のなかでどうしようもなくなったときには静かに去る覚悟ができた気がする。それは、今回の深澤さんの「悔いはない」で。書きながら整理がついてきた。ドームに立つほどの人物がドームのまんなかで大勢の観衆を前にことばを紡ぐ姿に、わたしは究極の「差」を感じたんだろうな。うまいことばが見つからないが、ちっともさみしくない、むしろほっとするほどの差が。

 

わたしは常々、深澤さんが自分の目に映る世界で「俺、世界一幸せだなあ」って思ってくれていたらいいなと思っている。深澤さんのなかの絶対評価で世界一の幸せ者でいてほしい。笑顔を連鎖させてくれるまっすぐですてきなひとの未来は、本人に微笑みかけるものであってほしい。

 

これからも、想像できないほどの選択と決断を繰り返しては土俵に上がりつづけるのだろう。そのたびに深澤さんが「悔いはないです」を積みあげていけますように。そう祈っている。